母の呪い

GW前にいっちょ家族旅行でもと息巻いて母と姉を箱根に連れて行った。小田急ロマンスカーに乗り弁当を食べ、登山鉄道に乗り換えて変わる景色を楽しんだ。特に目的もない旅なので、パンフレットに書いてある寺やなんやを適当に周り、宿にたどり着いたのは16時頃だった。母も歳なのでまあこのくらいのペースになる。宿にはいくつもの温泉が充実しており、我々はスタンドプレーで適当に疲れを癒やした。僕が汗を流して部屋に戻ったら、母が居た。「あんたちゃんとつゆを取りなさい」と体にタオルを当てて拭こうとしたときに、僕は心底気持ちが悪くなった。彼女にとっては一生僕は子供であって、世話焼きの対象なのだ。それが26のおっさんだとしても。これが30、40になっても、おそらく母の中で私は子供なのだ。無性にイライラとした。
そんな話を女友達にしたら「子供ができておばあちゃんになったら変わるんじゃないの?」というあっけらかんとした回答が返ってきて、僕はえらく腑に落ちた。この、母と子の関係を壊すのは、新たな家庭なのだ。はやくおばあちゃんにしてやらないと、母の呪いの中で彼女は死んでしまう。なんとか救ってあげたいのだが、あいにく結婚の予定はない。