今週末も休日を生き抜けなかった

地獄は頭の中にあります。今の現実を地獄と認識してしまうところに人の不幸があります。結局のところ、期待の水準を下げつつも、満足感が得られる程度の努力をし、ぬか喜びと自己嫌悪の繰り返しの中でのたうち回りながらゴロゴロ前に転がっていくことをロックンロールという言葉にまとめて、空から垂れた蜘蛛の糸をジャックに刺してギターを弾いてみようかなというそんな週末は訪れませんでした。もうちょっと頑張らなきゃいけないと感じつつもぬるま湯につかってみたり、これで最後のタバコと言い張ってはコンビニで460円を出してしまう。休日が怖いのは、恐れるからです。例えば、水責めを受けている人のことを考えてみましょう。ヤクザ映画とかによく出てくるアレです。水がじゃぶじゃぶ溢れている洗面台に、頭を押さえつけられて、顔を突っ込まされるやつです。当人に死なれては困るので、ヤクザも何秒かに一回は顔を上げさせます。その瞬間が僕らの休日なのです。必死で息を吸い込もうとする短いタイミング。僕らは、息ができない間は何も考えず必死でもがくことができます。一方で、水面から顔を上げられた瞬間には恐怖が生まれます。もう一度顔を突っ込まされるという恐怖です。一時一時の短い休息が心を削ります。ある時は思い切り息継ぎをしようとしたのに、またヤクザが頭を押さえつけるので、水を一度に吸い込んでしまって肺の中が大変なことになってしまったりするのです。地獄は頭の中にあります。明日もまた辛いことがあるのだと考えてしまう想像力が、すべての恐怖の根源であります。そういうものは全て捨てていきたいのですが、いささかでも人間らしくいたいのなら、それは厳しいようです。とは言え、楽しいこともたくさんあるのです。もう少し先のことを想像してみれば、きっとどこかで楽しいことが起こるはずです。今はそうやって凌いでみようかなと思います。