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なるたるを読んだ

読後感はあまり良くなかった。誰もが思いつきもしないようなアテで酒を流し込んで失敗したような感覚だった。度数の高い酒だった。粗筋をまとめようとすると酔っ払いの言葉みたいになる。
一言で言えば地球の叙事詩だった。ある女の子のもとに謎の生物が現れ、訳の分からないままに戦い、倫理観が崩壊して、世界が廃墟になる。
最終巻の巻末コメントでは作品に作者が言及している。曰く、かけがえのない命なんてない。みんな代替品でしかない。だからこそ、懸命に生きねばならない。と言うようなことだった。テーマがあまりにも逆説的かつ難解なので、ちょっと説明を加えとこうという鬼頭先生の親切心なのだろうか。
物語は欠落を再生しようという試みの下で生まれる。何かを差し出し、何かを受け取る。なるたるには、こうした枠組みはない。父を失い、母との和解を果たしたシイナ、という構図は僅か数頁の間に崩れる。すべては無に帰して、文明が終わる。そうした物語を受け取る私たちは、これは一体なんだったのだろうか?と反省を促される。物語である以上、そこになにか大切なもの、教訓や共感や教示がなければならないと考える。しかしそんなものはない。かけがえのないものなんて一つもない。全ては地球の歴史の一部であって、人類がそこに見出すような意味は何一つなく、ただそれを記憶する者が存在している。
極度に抽象化すれば、物語構造と作者の意図にそのような形式あるいは符号の一致を見ることができるかもしれない。しかし語られていないことがあまりにも多すぎて、極めていびつな漫画だった。説明不足という話ではない。コマ落ちのフィルムで映画を見させられては、解釈不能の文脈がいくつも生まれてしまう。それすらも「意味なんてない」と言えるほど、緻密に描かれているだろうか?