佐野さんについて、ふわっと

佐野さんというデザイナーが、東京五輪エンブレムを他人の作品からパクってデザインしたのではという話を聞いたのが1ヶ月くらい前のことだと思う。幾何的なデザインだし似たようなものが世界のどこかにあっても不思議ではない。ところが不思議なことに、佐野さんがこれまでに手掛けてきた作品にもパクリ疑惑が続々と出てきたらしい。どこからかパクリ元を見つけてくる人の洞察と尽力には甚だ感心せざるを得ないけれども、問題の扱い方がけっこう雑だ。幾つか出てきた疑惑の中には著作権を侵害している作品が含まれているが、中には疑惑どまりで争点の残るものもある。佐野さんという1人のデザイナーはその時点で社会的制裁を受けることになるだろうが、パクリっぽいというだけで損が生じてはたまらないだろう。小保方さんがSTAP細胞の発現に関する論文で不正行為を働いたとされたときにも、不正が認定される前から嘘つき呼ばわりがあった。その後、博士論文だったか卒業論文だったか、学生時代の論文に剽窃が認められることが分かり、問題が拡大していった経緯もよく似ている。論文の場合はオープンソースとして開かれているので、文章の剽窃があれば検証も確実にできる。佐野さんの場合は、何を盗用したのかというのは作品によってまちまちなところがあって、争点はそれぞれあるだろうと思う。アイディアなのか、イラストそれ自体なのか、とか。なにを盗用として認定するかって難しそうだ。トレースとかははっきり分かりそうだけど。というか、そういうデザインに関する疑惑を検証するのに、商用利用されている画像をネットにアップロードする行為も、権利侵害といえば権利侵害なのではないか? 不正を暴くため、商用利用を目的としないため、とかで許されてるんだろうか。そして権利者でもない人が騒いでいる印象もあったりして、佐野さんも悪いけど同情する気持ちも少し出てくるような気がする。いや、佐野さんというよりもむしろ同業者の人たちにかもしれない。こんな風にデザイナーが取り上げられる状況は気の毒だと思う。しかしまあ、何十年に一度の催しにデザインを提供する一流のデザイナーが起こした問題なので致し方ない。危惧しているのは、死人が出ないだろうかということだ。テレビは見てないので、佐野さんがどれだけ取り上げられているかは分からないけれど、小保方さんのときみたいなことにならなきゃいいなと思う。間違ったことを正当化できる人はいる。そんな人は大丈夫だけれど、その周りの人がそんなに丈夫とは限らない。「今回の件から得るべき教訓は」というと、バレないようにやれってことになるのかな。今まで誰も困ってなかったのに変な話だ。