アングレーム国際漫画祭

「慰安婦漫画」韓国OK、日本ダメ 仏国際展 主催者「政治的な宣伝」+(1/2ページ) - MSN産経ニュース

こんな記事がありました。慰安婦の強制連行があったかどうかっていう史実的な検証はさておき、表現の多様性は富んでいたほうがいいよねって思うんですけど①日本の漫画のみを政治的な宣伝だとしていること②「政治的な宣伝行為」が漫画祭に相応しくないとしていること、これら二点について疑問を持ちました。

①のように、特定の相反する2つの主張に対して別の対応が取られるのは何でかなーって考えると、出展する側の規模のデカさが問題なのかもって思いました。韓国の「散ることのない花」っていう企画展は、行政機関の一つである女性家族部が執り行ってるようです。それに比べると、日本側の作品出展者はこんなとこなので、韓国の出展を取り下げるのは国際問題になるけど日本側は取り下げてもいいやっていう対応の差が生まれるのは分かる気がするんですよね。どちらの漫画の内容も確認できてないので、その作品が含むメッセージからの比較は出来ないんですが、漫画祭主催の立場だったら、その内容がどうあれ行政機関の出展取り下げってしづらいんじゃないかなあと。慰安婦記者説明会は中止されたようですけど。
 言いたいことは、主催者の態度云々ではなく、メディア的な国策において日本が遅れてるのかもってことです。事実がどうあれ、ある認識が流布されれば、その認識が事実に近くなっていくし、その意味でメディア戦略っていうのは重要だと思います。イルカ追い込み漁を批判的に描いている映画のthe coveなんかがいい例で、wikipediaなんかには事実誤認が映画に多々含まれることが書かれているのですが、シー・シェパードにはどんどんお金が集まって行ったりします。

日本の捕鯨が海外から非難をされる仕組み - 勝川俊雄 公式サイト

食文化については、僕は机の脚以外はなんでも食べていい気がしてます。

②については、漫画が表現である以上、そこに作者の政治観が出るのは当たり前だと思うからです。もちろん政治観だけではなくて、人間観や人生観、宗教観など、作者の考え方を縁取っている様々なイデオロギーは存在します。そのうちの「政治観」を表現して漫画とすることがすなわち「宣伝行為」であるとするのは不当かなと。しかしまあ、名前の大きい漫画祭となると、出展すること自体が衆目を集めるので、作品の内容如何に関わらず出展行為そのものが宣伝になるために、主催者としての企画展選別が図られるのはある程度の妥当性はあるのかなと。日本側出展者の目的は完全に宣伝らしく、

まずは短期戦としてアングレームの国際漫画フェスティバルに、韓国の慰安婦漫画に対抗する漫画を制作し、出品する。さらに1月に行われる展示会のブースに、韓国が50本の漫画を出展するならば、日本からは100本を目標に出展し、日本の正当性を訴える。

とまで書かれているので、宣伝行為?倍返しだ!ってな感じにとても熱い対抗意識が感じられて楽しいです。一方で韓国側の出展はOKなので、やはり①で言及した出展者の規模のデカさって重要な気がしてます。

述べてきたことをまとめると、

  • 正当性がどちらにあるのか分からない2つの相反する主張がある場合、オーディエンスを味方につけるのであればメディアを通じた戦略が必要になるよ
  • そのメディアの後ろに権威づけする機関があればより有利かもよ
  • 漫画の伝えるものを宣伝とする前に、もうちょっと議論があってもいいんじゃないの?

の三本です。それではまた来週。うふふふ~(書かない)