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2013/04/29バイト

新津駅から歩いて15分ほどのインテリアショップで四月頭から派遣社員として土日のみ働かせてもらっていた。扱っている商品が値段の張るものばかりで扱いには神経を使っていた。社長の菅井さんという方がとても親切な方で、一日の業務が始まる前にいつも叱咤激励をしてくれた。菅井さんの話の中で特に印象的だったものが一つある。蚤の話だ。

蚤はとても高く飛べる。人間が蚤と同じ程度飛ぼうとすると、東京タワーのてっぺんくらいまでジャンプできなければいけないらしい。蚤のそうした習性に関する実験に次のようなものがある。まず、高く飛べる普通の蚤を捕まえて試験管の中に入れ、出られないように蓋をしておく。蚤は試験管から出ようともがき、ジャンプする。しかし蓋が開くことはない。そのままの状態でしばらく放置した後、蚤を試験管の外へ出してやる。果たして蚤は、試験管の高さまでしか飛べなくなっているそうだ。試験管の全長が仮に10センチだとしたら、蚤は10センチまでしか飛べなくなる、ということだ。それは蚤の足が疲れたためであるとか、頭をぶつけておかしくなったためであるとかではない。蚤はそれ以上ジャンプすることを諦めるのだ。

この蚤が再び10センチ以上飛べるようになる方法があるという。それは、被験体となった蚤の側でしばらく他の蚤を飼育するというものだ。他の蚤が10センチ以上ジャンプしているのを観察することで、被験体である蚤もまた再び10センチ以上ジャンプができることを思い出すというわけだ。

これらのことを通して菅井さんは、少々こじつけがましい話であることを自嘲的に前置きしながら、しかし自信を込めた口調で言う。人間もまた蚤と同じなんだよ、と。周りに頑張っている人がいれば、自分も頑張らなくてはと思う。そうして、何度天井に頭をぶつけようが、飛び続けることができるのだと。僕にはこの話が正確ではないように思えたが(蚤は哺乳類の肌から分泌される酪酸という気体に反応して飛びあがるはずだから、他の蚤から学習することは出来ないのでは?)、彼の言わんとすることはよく分かった。この話が示唆するところは、周りの人間から見て学べということが一つであり、僕がもう一つ重要だと思うのは、その人間を大きく変えることができるのは環境だ、ということだ。他者との関係性との中で自分を見直し、努力をしようと思える環境が、人を変えるんだろうな、と思った。

土日のみのアルバイトで学んだ蚤の話でした。落ちてねえ。