解像度

水面の裏側を見るには勇気がいる。天からの梯子みたいに陽の光が差している。音は一つもない。肌に纏わりついた水泡が、海月のように成仏していく。そんな風に奇麗な景色はあまり無いものだけど、この間乗った小田急線の窓はとても良かった。ジョッキでワインを提供する、海賊酒場みたいな新宿の飲み屋は9時で閉店したので、多分私たちは世界の中でも五本の指に入る愚鈍な群れになって、なんとか改札を通り抜けた。散り散りになって巣に帰る途中、目をつぶったら、全然知らない土地に居ることを電車の中で悟る。子供が麦わら帽子を深くかぶっていた。夏の名残がどこにでもあった。窓の外は狂ったように晴れていて、光線が目を突き抜けて後頭部を焼いているみたいだった。頭の痛みはどうしたって和らがないから、ホームの自販機で買った緑茶を飲みながら、ずっと窓の外を見ていた。広めに切り取られた風景の中で、無機質な建物が流れていくのを見ていると、拓けた河川敷が現れた。中州で一人取り残された子供が、飛び石をじっと見ていた。