どうやって虫を殺すか?

一ヶ月ほど前にバナナを一本腐らせたら、何処からともなく虫が湧いた。部屋に2.3匹ふよふよと浮いている。実害は多少うざいくらいだ。虫との同棲を楽しんでいたが、悲しいことに引っ越しが決まった。別れを惜しむくらいならいっそ奴らの最後を見届けたい。というわけで殺すことにした。

彼らはふよふよと宙に浮いている。簡単に標的になってくれるが、ぱちんぱちんといくら両手で叩いても捉えられない。そうこうしながら1週間経った。まだ元気そうにふよふよと飛んでいる。隣人もいい加減不審がる。俺だって隣の部屋から散発的に拍手が聞こえてきたら気が気でない。そういう宗教か?と疑う。近所迷惑に差し掛かった現在、俺は真っ暗な部屋にいる。

虫には須らく走光性というものがあるらしい。少しでも明るい場所に移動しようとする性質のことだ。男が須らく美女に群がるように、虫も夜の街頭に群がるのである。そういうところも共感しないではないポイントだった。俺は真っ暗な部屋にいる。一方、浴室だけは電気を点けている。彼らがフラフラと浴室に飛び込んだあたりで、ここぞとシャワーを浴び、溺死を強いる算段である。手では捉えられなかったが、シャワーの水流ならいとも簡単に彼らを殺すことができる。

孔明も唸るこの計略、1つ欠点がある。真っ暗な部屋ですることがないので、結局布団に横たわり、そのまま朝を迎えてしまうのである。今日こそはなんとか成功させたい。こうやって文章をしたためていると、光るスマホに虫が寄ってくる。ういやつ。早く殺したいけど、眠いし、明日でいいかな。おやすみ。